2021/08/10お知らせ
「サリドマイドの副作用のメカニズムの解明」をご紹介します
サリドマイドの副作用のメカニズムの解明
2010年に伊藤らのグループがサリドマイドの副作用に関わっているタンパク質を発見したと発表した(Ito et al. Science (2010))。サリドマイドは妊婦が睡眠薬として服用した結果、生まれた子どもに重度の障害(催奇性)が出るという世界規模の薬害が発生した薬として知られています。しかし、なぜ副作用が起きるか長年謎のままでした。
伊藤らのグループは、磁性ビーズ「FGビーズ」を使用したフィッシング(ケミカルプルダウン)と呼ばれる方法でサリドマイドの副作用の原因タンパク質であるセレブロン(CRBN)を見つけることに成功しました。FGビーズの表面にサリドマイドを固定化、無数のタンパク質が存在するライセート中からサリドマイドが作用(結合)するタンパク質を磁石を使って精製したのです。FGビーズは微小なプラスチックの球体で、その内側にフェライトを含有しているため磁石で引き寄せることができます。
セレブロンはタンパク質の分解に関わるユビキチンリガーゼという酵素の構成因子で、サリドマイドがセレブロンに結合すると、手足の奇形が引き起こされるようになることが明らかとなりました。本研究の知見を活かして、サリドマイドの副作用を抑制した新薬が開発されることが期待されています。
ニワトリの卵を使った実験例
関連論文:サリドマイドの論文
FG beadsの用途
FG beadsは、ケミカルプルダウンや免疫沈降によく使用されます。ケミカルプルダウンは、前述のサリドマイドの実験のように化合物(薬物、天然物、毒性物質など)のターゲットタンパク質を特定するために行われます。標的タンパク質を同定することにより、作用機序を解明することができ、疾患診断マーカーの発見や新しい治療薬の開発が可能になります。これまで、薬物、天然物、毒性物質などの多くの化合物のターゲット検索に役立ち、ケミカルバイオロジーの分野に広く貢献しています。FG beadsに固定化できるのは化合物だけでなく、免疫沈降用に抗体を固定化したり、タンパク質、DNAなども固定化可能で用途は多岐に渡ります。最近では抗体医薬の研究、病気の診断法の開発など幅広くご使用頂いています。
使用例:https://fgb.tamagawa-seiki.com/wp/case_study
FG beadsを使用する場合は、まず対象リガンドの官能基(化合物(薬剤)、タンパク質、DNAなど)に応じてラインナップから選択します。推奨されるプロトコールに従ってリガンドを固定化した後、次のステップは、標的の生体物質をアフィニティー精製することです。
プロトコール:https://fgb.tamagawa-seiki.com/protocol/index.html